原稿

原稿

「マトリックスの真実」「おカネの真実」「空前絶後の社会運動」「志の世界」「大震災の前線」「右傾化選挙の中で」
世の中の根本的な仕組み、神とは、支配とは、おカネとは、社会とは、人間とは、・・・根源から、そして、前線から、書きました。
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2012/09/30

金鋒博士からのメッセージ


一日も早い日中関係の正常化を願っています。

1980年代後半、私が初めて日本に留学した時、ちょうど、学校で国旗掲揚と国歌斉唱を義務化する議論が盛んでした。学校で国旗をあげたり、国歌を歌ったりすることは、私達にとっては当然のことだったので、そうすることに、賛成と反対の意見があることに私はショックを受けました。特に、国旗国歌をやらなくていいという学校の先生の意見は驚きでした。中国でそんなことをしたら、ものすごく怒られますし、ひょっとしたら殴られるかもしれません。でも、さまざまな意見を聞いている中で、国旗や国歌に対して自由な選択ができるということは、素晴らしいことだと思うようになりました。特にアメリカは、911事件があってから、愛国運動の嵐がおこって、その勢いで、アフガニスタンやイラクと戦争をしました。あの運動がなかったら戦争ができなかったのではないかと思います。その時に、愛国というのは、時には、危険な行為につながるということを知りました。日本のように自由な国は、実は世界ではとても少ないと思います。唯一かもしれません。

日本は、戦争に負けてから、思想の多様性が生まれ、自由で民主的で、科学技術の発展もとても速く、世界中に注目されました。戦争に負けたお陰で軍事力の発展を目指さず、兵器の開発も行わず、科学技術は民間の生活に役立つものばかりでした。日本の製品が世界中に広がって人々の暮らしを豊かに変えていきました。

こうしたことを考えると、私は、負けるということは決して悪いことではないと思いました。逆に、勝つことが必ずしもいいことでもありません。負けたら二度と同じことはしないようにしますが、勝ったら、もっと勝ちたいと思うようになります。大事なことは負けた後でどのようにして立ち上がり、どこに向かっていくかです。

NHKの番組の戦争に関するインタビューが中国の知識人の間で称賛されています。番組の中で、「お国のために死ねますか?」という問いに対して、「命を掛けるほどものじゃない」「お国のために死ねという国だったら滅んでしまえばいい」という答えがありました。
戦争があったら、国のために死んでもいいかと言われたら、私は死にたくありません。家族がいて、無責任な事をしたくありませんから。これから、戦争は避けるように努力する必要があります。国のリーダー達は自分で戦場に行くことはありません。犠牲になるのは国民です。

日本の大地震の時、色々なニュースが中国でも放映されましたが、その中で、一番感動したのは、数十名の電力会社の人達が、身の危険をかえりみずに破壊された原子炉に向かったことでした。この放送を見て多くの中国人は衝撃をうけました。もし中国で同じことが起こったら、こうした勇敢な行動を起こせる人がどれだけいるのかとインターネットで大きな反響を呼びました。

戦争では死にたくないけど、こうした大きな災害の時に、自分の命を捨ててでも、人の命を救おうとする人は、決して少なくないかもしれません。これは、国と国の戦争、物を奪ったり侵略したりするために死ぬのとはまったく意味が違います。

本当は、多くの中国人は、日本のことをとても尊敬しています。政府どうしで喧嘩しているにすぎません。そして、そのやり方はとても稚拙です。政治家のパフォーマンスだと思って無視してしまえばいいと思います。

私は、過去の戦争のことは早く忘れてしまいたいと思います。率直に言って、今、日々生活を送って、国の間を行き来している私達は、過去に戦争について何の責任もありません。それでも、責任を追及したら永遠に解決はできないのです。将来のことを考えても、いつも戦争の陰があったら、さらに友情が深まって発展することは見込めません。

デモで破壊活動が行われた事はたいへん残念なことです。これは、ごく一部の暴徒であって、大多数の中国人は暴力に対しては批判的です。これに対しては中国政府も犯罪として厳しく対処しています。マスコミが大きく報道しても、決してそれに反応して欲しくないと思います。決して対抗せず、無視して淡々と日々を過ごすのが一番いいと思います。今、この問題は、世界中が注目しています。対抗しあってもそれで得をするのは誰でしょう?私達は賢くふるまう必要があると思います。

私達は遺伝子レベルでは全く区別がつかず、本当によく似た文化をもっています。そして、共生こそ、世界の真実です。自分にとって不都合なものを取り除こうというのは、結局、自分自身を傷つけることになります。

別添として、愛国主義に関する世界の賢人達の格言を紹介します。

一日も早く問題が解決されて、正常な交流ができることを心より願っています。


2012年9月24日
中国科学院
教授 金鋒