ある感染症や伝染病が世界的に流行することをパンデミックといいます。
歴史的に遡ると、14世紀にヨーロッパで流行した黒死病(ペスト)、19世紀から20世紀にかけて世界のさまざまな地域で流行したコレラ、そして、1918年から19年にかけて世界中で猛威をふるったスペインかぜがあります。
このスペインかぜは、人類にとっての最初のインフルエンザの大流行です。今からわずか90年前、世界の人口が8~12億の時代に、実に6億人もの人が感染し、死者は、4000万~1億人にのぼったと言われています。全人類のおよそ半分が感染し、10%もの人が死んだのです。日本でも、当時5500万人の人口に対して、39万人も死亡しています。スペインかぜは、歴史上、全てのヒトの死因の中で、もっとも多くのヒトを短期間で死に至らしめた記録です。この大流行のために、第一次世界大戦の終結が早まったとも言われています。
第二次世界大戦を終結させたのは、原子爆弾の投下でしたが、第一次世界大戦は、それよりも殺傷力の高いインフルエンザの流行とともに終わっているということを、私達はしっかりと覚えておく必要があります。
スペインかぜの病原体はA型インフルエンザウイルス(H1N1亜型)で、鳥インフルエンザウイルスに由来するものであった可能性が高いことが明らかになっています。それまでヒトに感染しなかった鳥インフルエンザウイルスが突然変異して全く新しい感染症となり、このウィルスに対して免疫を持った人がいなかったことが、この大流行の原因だと考えられています。
こうしたインフルエンザに対しては、現在でも、有効な対策がほとんどないのです。